探しものがあって、表参道を歩いた。

昨日とはうって変わり、今日の東京は暖かかった。

目深にかぶったニット帽が暑い。

「そこにありますように……」

週末の雨の匂いが残る森を歩きながら、ずっとそう思った。



サハラには分かってた。

探しものが、そこにもうないことを。

数日前、そこには赤と白の鉄の塊が高くそびえていた。

「もう一度だけ、自分の目で確かめよう」

そう思いながら、森を進んだ。



あるはずの場所に、探していたものは、やはりなかった。

工事中のフェンスの向こう側には、

先週と同じ赤と白の鉄の塊が高くそびえていた。



思い出がたくさん詰まった風景は変わってしまったけれど、

同じものを見せてくれた「偶然の神さま」に会えたという不思議。



【こぶし】とキーボードを叩くと、

「拳」「古武士」「鼓舞し」「辛夷」などが出てきて、少し笑った。

なにを探しに行ったんだろ。

どれもこれも、今のサハラには必要なものばかりのような気がした。